第14期 医療機器開発海外展開人材育成プログラム 活動レポート

開会式

日時

2026年5月29日(金)14:00~14:30

内容

開会式は、国立健康危機管理研究機構にて現地開催し、国立国際医療センター副院長の廣井透雄先生をはじめ本プログラムにご協力いただく国立健康危機管理研究機構の先生方、第14期受講生の方々、東京都産業労働局商工部担当者、アドバイザーが集いました。開会挨拶のあと、東京都医工連携HUB機構の柏野プロジェクトマネージャーよりプログラム概要説明を行いました。また、受講生を含む関係者の自己紹介を行いました。

第1回 講義「フィリピン・ベトナムの医療現場の実態を学ぶ」

日時

2026年5月29日(金)14:30~16:30

講師

国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局  金森 将吾氏
国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局  土井 正彦氏

内容

今回の講義では、医療現場の実態を学ぶとしてフィリピン及びベトナムでのビジネスを行うにあたっての基本的な情報を網羅的に学ぶことができました。
前半では、フィリピンの医療現場の実態について、金森氏よりご講演いただきました。講義では、フィリピンの基本情報をはじめ、保健医療行政や医療サービス提供体制、医療機器の調達制度について、9年間の現地経験を交えながらご紹介いただきました。
フィリピンは人口約1億1,200万人を有し、若年層の割合が高い人口構成が特徴です。一方で、近年は非感染性疾患の割合が増加しており、疾病構造の変化が進んでいることが示されました。また、医療施設は公立・民間に大別され、サービス提供レベルに応じたライセンス制度が導入されています。地方部では専門医不足や医療の質の地域格差といった課題も存在しており、医療アクセス向上に向けた取り組みの重要性について説明がありました。
後半では、ベトナムの医療現場の実態について、土井氏よりご講演いただきました。講義では、ベトナムの概況や医療機器市場、医療提供体制の現状と課題に加え、日本による保健医療協力の変遷について解説いただきました。
ベトナムでは急速な高齢化が進行しており、高齢化社会への対応が重要な政策課題となっています。また、2020年頃から医療DXの推進が本格化している一方で、インフラ整備や法規制、人材育成、プライバシー・セキュリティ対策など、さらなる発展に向けた課題も紹介されました。さらに、ベトナムは南北で異なる地域特性を有しており、北部は行政機関との連携が重視される一方、南部は商業活動が活発でビジネス展開に適した環境を有しています。現地で事業を進める際には、それぞれの地域特性を踏まえた戦略立案が重要であることが示されました。

第2回 講義「薬事に関するフィリピン・ベトナムの商流(医療機器の海外展開:薬事と代理店戦略のヒント)」

日時

2026年6月5日(金)14:00~16:00

講師

クアルテック・ジャパン・コンサルティング株式会社  村山 剛氏

内容

講義では、アジア地域へ海外展開を目指す企業様へ、各国の薬事規制調査、製品登録までのコンサルティングを行う村山様から、フィリピン、ベトナムの医療機器規制概要、注意点、許可取得までの流れ、また薬事に関する現地の商流についてお話しいただきました。医療機器の許可を現地の代理店名義で取得した場合、他の代理店への販売が難しく、ベトナムでは代理店を変える際には医療機器の許可をまたゼロから取得しなければなりません。そのため、医療機器海外展開における「薬事」への対応は、単なる許可取得ではなく、事業戦略の一部といえます。同じASEAN地域でも、フィリピンやベトナムなど国によって、日本国内での許認可の要否や登録の有効期間、法定代理人の移管可否などの制度が異なることを学びました。また、薬事規制は常に更新されるため、各国の動向を的確に把握することが重要です。その上で、事業初期は市場変化に柔軟に対応し、市場拡大期には長期的かつ安定的な事業運営を目指す必要があると考えました。

 

第3回 講義「臨床現場での医療機器管理の実態を学ぶ」

日時

2026年6月26日(金)14:00~16:00

講師

国立国際医療センター 臨床工学室 臨床工学技士長  深谷 隆史氏

内容

講師の深谷技士長より、日本における医療機器の現状と病院内での医療機器の保守についてご説明いただきました。
まず医療機器の現状として、医療法、QMS省令、日本工業規格(JIS)及び薬機法における医療機器分類、PL法について解説がありました。PL法では海外との違いや現地での医療製品の扱いにも言及がありました。また、医療機器の修理・保守契約における病院と企業のメリット・デメリットについて説明がありました。
次に病院内における医療機器の保守について、医療機器のライフサイクルや耐用年数、償却期間、中央管理と分散管理の違い、保守点検の重要性について説明がありました。
さらに、減価償却後も医療機器を安全に長く使用する重要性が故障曲線を用いて示され、診療報酬との関係についても解説がありました。
加えて、臨床工学技士による海外病院訪問事例として、2017年から2025年にかけてのベトナムの病院における医療機器の変遷や、消耗品不足により機器が十分活用されていない現状が紹介されました。
最後に、現地と国内病院の設備の差や環境整備の課題について説明がありました。
講義後、受講生全員で医療機器管理室を見学し、貸出情報の管理や医療機器の管理方法等ついて教えていただきました。また、臨床工学技士の業務内容と併せて、各種機材についても解説を受けました。

特別講義

日時

2026年7月1日(水)14:00~16:00

講師

独立行政法人国際協力機構 民間連携事業部 企業連携第二課  木内真理恵氏
JICAベトナム事務所  小笠原禎氏、有澤 律子氏
JICAフィリピン事務所  倉持百花氏

内容

初めに、中小企業・SDGsビジネス支援事業「JICA Biz」について、木内氏より説明があり、中小企業・SDGsビジネス支援事業を中心に、開発途上国におけるビジネス展開と社会課題解決の重要性が示されました。途上国では民間資金が公的資金を上回っており、市場・生産・イノベーションの拠点として成長していること、また国内ではSDGs・ESG投資の拡大により、企業が持続可能性を経営に組み込む重要性が高まっていることが共有されました。同事業は、民間連携を通じて日本企業と現地企業の共創を促進し、中小企業の海外展開や金融機関との連携を通じて、途上国の経済成長と課題解決を支援するものです。
次に、小笠原氏および有澤氏より、医療機器開発・海外展開に関するベトナムでの調査事例について説明がありました。高齢化や疾病構造の変化、都市部への患者集中といった課題に対し、日本企業の技術を活用することで、医療の質の向上および効率化につながる可能性が示されました。
最後に、倉持氏より、フィリピン保険セクターの概況について説明がありました。現地の医療保険分野における制度上の課題、UHC推進の状況、医療提供体制の脆弱性が指摘され、技術協力・資金協力による支援事例が紹介されました。

第4回 検討会

日時

2026年7月22日(水)14:00~16:00

内容

検討会では、受講生が事前に作成したプレゼンテーション資料を用いて、自社の会社概要や海外展開状況、展開を検討している医療機器・製品、対象市場の分析、課題、今後のビジネス展開方針について発表しました。
プレゼンテーションでは、主にベトナム・フィリピンを対象とした海外展開について、現地医療市場の調査結果、ターゲットとなる医療機関の選定、販売チャネルや代理店戦略、製品の差別化方針、事業化に向けたロードマップなどが共有されました。また、各社より海外展開に向けた具体的なスケジュールや想定課題、今後の検討事項についても説明がありました。
プレゼンテーション終了後、アドバイザーからは各社共通の課題として、現地市場やニーズへの理解深化、自社製品の優位性を踏まえたターゲット設定、適切な販売パートナー・外部ネットワークの活用、製品特性に応じた事業戦略および具体的な数値目標の策定の重要性について助言がありました。
今後の講義を通じ現地の市場動向や競合製品の深堀、ターゲティングなど、最終報告会に向けてさらに具体的なビジネスプランを検討していきます。

 

第5回 講義「臨床現場での医療機器の実態を学ぶ」

日時

2026年8月3日(月)14:00~16:00

講師

国立健康危機管理研究機構 臨床研究センター 産学連携推進部 次長
日本大学歯学部 口腔外科学第I講座 主任教授 丸岡豊氏

内容

本講義では、まず初めに国立国際医療センター(NCGM)の沿革および院内ツアーで見学する各施設についてご説明いただきました。
NCGMは、国立健康危機管理研究機構(JIHS)の臨床部門として、また、日本に88施設しかない特定機能病院として、最善の総合診療を提供しています。今回は、講義後に NCGM内の人間ドックセンター、生理検査室、放射線診断科、検査科、内視鏡室、手術室前、入退院支援センター前などを見学させていただきました。各見学先では、導入されている医療機器の役割や使用方法について、詳しくご説明いただきました。
通常は立ち入る機会の少ないエリアまでご案内いただき、最新の3Dマンモグラフィーや、検査中に胃カメラを胃から抜くことなく先端部を洗浄できる機能を搭載した胃カメラなど、先進的な医療機器についてもご紹介いただきました。
また、質疑応答を通じて活発な意見交換が行われ、受講生にとって大変貴重な学びの機会となりました。今回の見学で得た知見や気づきを、受講生それぞれの展開想定国の医療環境と比較し、今後の検討や取り組みに活かしていきます。

 

第6回 実習「救命救急センターの実態を学ぶ」

日時

2026年8月25日(火)14:00~16:00

講師

国立国際医療センター 救命救急センター・救急科 佐々木亮氏

内容

講義では、東京都の救命救急現場を取り巻く現状について伺うとともに、事前に参加者から集められた質問にもお答えいただき、救急医療が抱える課題や現場で求められる医療の在り方について学びました。特に、救急搬送される患者の中には、緊急時にマイナンバーカードを持ち合わせていない方も多く、患者情報の把握やDX化には課題があることを知りました。また、救命救急の現場で使用される医療機器には、「速い、単純明快、丈夫」であることが重要であると教えていただきました。緊急時に十分に活用するためには、迅速に使用できること、簡単なステップで操作できること、さらに壊れにくく継続して使用できることが重要であると学びました。講義後には、救急外来、救命救急センター病棟、ICU/HCU、ヘリポート等を見学し、救急搬送の受け入れから診療・処置に至るまでの流れを学びました。各部門を見学する中で実際に使用されている医療機器、設備、情報管理システムについてご説明いただき、受講生の学びが深まりました。

 

第7回 プレ発表会

日時

2026年8月31日(月)14:00~16:00

内容

プレ発表会では、受講生がこれまでの講義や院内見学、検討会を通して学んだことをもとに、ベトナム・フィリピンの市場動向や医療体制・医療環境について各自で調査・検討し、自社製品の現地展開に向けたビジネスプランや今後の課題について発表しました。
当日は、アドバイザーやメンター(過去の受講生)にもご参加いただき、発表後には、これまでのご経験を踏まえたコメントやアドバイスを受講生へお寄せいただきました。
受講生によって、これまでの海外展開の実績や取り扱っている製品・サービスなどは異なります。そのため、それぞれの事業領域や展開先の市場・ニーズに応じて、事業戦略や事業計画を検討していくことが重要です。
今後は、講義や実習に加え、医療現場で働く方々への個別ヒアリングなどを通して、現地のニーズや課題への理解をさらに深め、最終報告会に向けてビジネスプランの具体化を進めていきます。

 

第8回 講義「看護部・放射線科・リハビリテーション科の業務の実態を学ぶ」

日時

2026年9月7日(月)14:00~16:00

講師

国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局     馬場洋子氏
国立国際医療センター   看護部門        上村一郎氏
国立看護大学校                  梅田亜矢氏
国立国際医療センター   放射線診療部門     寺嶋美聡氏
国立国際医療センター   リハビリテーション科  藤谷順子氏

内容

看護部・放射線科・リハビリテーション科の3つの診療科から日本と海外の医療事情や医療機器を取り巻く環境についてご講義いただきました。
まず、看護部の皆様より看護、介護において、早期離床の考え方への変化に伴い、背面解放座位を支援する医療機器などが新たに導入されているというご説明をいただきました。また質疑応答では、自己抜去について見守りシステム等を使用し抑制を可能な限り使用しない方法も導入されていること、瞳孔の動きや腕の可動域等で見ることができるものの、明確な決まった予兆がなく、かゆみなどを理由に無意識に外してしまう場合についてもご解説いただきました。
続いて、放射線科より診療放射線技師の業務と国際展開推進事業への取り組みについてご説明いただきました。日本においては、受診者の放射線影響リスクを最小限に抑えるために、日常的に定期管理(品質管理等)が行われています。一方、ベトナム、ザンビア、ラオス等では、機器納入後の精度管理や修理体制が十分でなく、故障後に長期間稼働できないケースもあることを学びました。日本では当たり前と考えている仕組みも、文化・宗教・経済的背景によって異なるため、現地との対話を通じて理解することの重要性を実感しました。
最後にリハビリテーション科より日本とアジア諸国におけるリハビリテーション関連機器市場の違いについてご解説いただきました。海外展開においては、HPやSNS等から製品の仕様や詳細情報に容易にアクセスできることや、国際通信販売等、購入しやすい環境を整えることも重要であると学びました。さらに、アジア諸国では同国内の利用機関間の格差が日本より大きいこと、家族が介護を担うことが多く、機器を用いた訓練が好まれる場合があるなど、日本とは異なるニーズについても理解を深めることができました。